予備(よび)とは、一般に何かを準備すること、あるいは将来の事態に備えるため用意した何かことを指す。刑法学においては、犯罪の一形態の一つで、実行の着手に至る前段階の状態を指す。予備行為を犯罪とすることを予備罪という。(以下刑法の条文に言及するときは、番号のみを挙げる)

 

予備の状態では、まだ法益侵害への危険は未遂にもならないほど微弱な状態であるので、一部の犯罪をのぞいては刑法上処罰されない(ただし各種の特別法に触れることはある)。

刑法において、予備行為が犯罪とされるのは、

このほか、破壊活動防止法39条・40条に規定があるほか、凶器準備集合罪(208条の3)が殺人罪傷害罪等の予備行為を処罰する性格を有する。

特殊な形態としては、私戦予備罪(93条)、凶器準備集合罪(208条の3)がある。通常の予備罪は予備のみが処罰の対象とされているが、両罪は傷害罪等の予備を処罰すると同時に公共の危険犯となるものである。

 

なお、基本犯についての実行の着手以前の行動を捕捉する他の処罰類型として準備陰謀計画がある。

  • 準備 - 通貨偽造準備罪における準備とは、他人に犯罪の実行をさせる目的で準備する行為(他人予備)も含まれるとされる。
  • 陰謀・計画 - 陰謀(いんぼう)・計画(けいかく)は、複数のものが犯罪に関する謀議をすることで、外形的に準備行為に至る前の段階をいう。

予備行為は基本犯の実行の着手以前の行為であり、予備段階でとどまれば法益侵害が軽微ですむため、自首した者に対して刑を軽減・免除する規定がおかれることがある(通常の自首に関する42条1項は、任意的に軽減できるだけ)。

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 未遂(みすい)とは、「犯罪実行に着手してこれを遂げなかった」場合をいう。日本法においては、刑法第43条に規定がある。狭義かつ一般的には障害未遂を指すことが多いが、中止未遂という概念もある(後述)。反対語は既遂

 

未遂を罰するかどうかは日本法においては「各本条で定める」と規定され(刑法第44条)、具体的に「未遂を罰する」という規定がある場合にのみ罰せられるが、ほぼ全ての犯罪で未遂も罰するよう規定されている。

 

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 幇助(ほうじょ)とは、刑法において、実行行為以外の行為で正犯の実行行為を容易にする行為一般を指す。

幇助行為を行った者は、刑法62条1項で従犯幇助犯)とされる。従犯(幇助犯)は、狭義の共犯の一種である。

  • 刑法第62条第1項(幇助)
    • 正犯を幇助した者は、従犯とする。
  • 刑法第63条(従犯減軽)
    • 従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。

例えば、AがB殺害の凶器となった拳銃を犯人Cに交付した行為や、勤め先に強盗が入ることを知ったDが店の金庫の鍵を開けておく行為などが、幇助にあたる。手段、方法は問わない。上に挙げた例のように物理的に実行行為を促進する行為(物理的幇助)はもとより、行為者を励まし犯意を強化するなど心理的に実行行為を促進した場合(精神的幇助)も、幇助となる。

幇助の概念は曖昧であり、あらゆる行為を犯罪としかねない危険性があるため、幇助犯の成立を安易に認めることは避けなけれならない。例えば、強盗に使用された包丁を売り渡したホームセンターの店員の行為や、海賊版DVDの作成に使用されたコンピューターやメディアなどを供給した電器店の行為など、本来、犯罪行為とは無関係な法的に否認されていない中立的行為による幇助について、どのように処罰範囲を限定するか、近時、議論が高まっている。

なお、実際の運用では、幇助犯として処罰される場合は極めて少なく(1/10程度)、複数人が犯罪に関与した場合、大半は共同正犯として処理されている。幇助として処罰されるのは、賭博開帳の見張りがほとんどである。

幇助犯の法定刑は、正犯の刑を減軽した刑である(必要的減軽)。ただし、法律上、幇助犯の処断刑が正犯の処断刑より下であることまでは求められてはない(理論上では、例えば、情状などによりそれぞれの処断刑について、正犯が法定刑の下限で、幇助犯が法定刑の上限となったというような場合に、処断刑が逆転する余地はある)。

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 未遂の教唆(みすいのきょうさ)とは教唆者が、被教唆者の実行行為を初めから未遂で終わらせる意思で教唆を行う場合を言う。 学説上、可罰説と不可罰説が対立している。
 また、未遂の教唆を行った場合に、教唆者の意図に反して結果を生じてしまった場合に対しても、未遂犯説、既遂犯説、過失犯説などの学説の対立がある。

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 暴行罪(ぼうこうざい)は、刑法208条に規定されている罪。刑法第27章「傷害の罪」の中に規定が置かれ、広義の傷害罪の一種である。

暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときに暴行罪となる。法定刑は、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料

特別法による加重類型として、暴力行為等処罰ニ関スル法律の集団的暴行罪(1条)・常習的暴行罪(1条の3)・集団的暴行請託罪(3条)、決闘罪ニ関スル件の決闘罪、火炎びんの使用等の処罰に関する法律の火炎びん使用罪などがあり、単なる暴行罪よりも重く処罰される。

 

 

暴行罪の「暴行」とは、人の身体に向けた有形力の行使を言う。有形力とは物理的な力のことで、典型的には殴る、蹴るなど(暴力)がこれに当たり、その範囲はかなり広い。判例によって暴行とされたものとして、毛髪を根元から切る(大判明治45年6月20日刑録18輯896頁)、着衣を引っ張る、お清めと称して食塩をふりかける(福岡高判昭和46年10月11日刑月3巻10号1311頁)、人に対して農薬を散布する(東京高判昭和34年9月30日東高刑時報10巻9号372頁)、室内で日本刀を振り回すなどがある。 しかし、つばを吐きかけるなどのように、傷害の危険が全くない有形力の行使までを暴行として捉えてよいのかどうかについては争いがあり、暴行というためには身体の生理的機能を害する程度の危険のある行為である必要があるとする学説もある。

力学的な力以外の、エネルギーによる暴行が認められるかという点でも争いがあるが、判例はブラスバンド用の太鼓を室内で連打し、被害者を朦朧とさせた事件で音による暴行を認めた(最判昭和29年8月20日刑集8巻8号1277頁)。

催眠術をかける行為については、前述の生理的機能を害する程度の危険のある行為を必要とする学説からは、それは心理的作用に過ぎないため暴行とはいえないとされる。

 

 

有形力の行使が被害者の身体に現実に接触する必要があるのかどうかという点も問題となる。 例えば、人を狙って石を投げたがたまたま当たらなかった場合である。この場合、暴行罪が成立していないと考えると、暴行の未遂を処罰する規定はないので、不可罰という結論になる。 しかし、人に傷害を加える危険のある行為をしている以上、それがたまたま当たらなかったとしても暴行罪の既遂として処罰できるとするのが学説の多数説であり、そのため、身体的接触は必要ないとされている。

さらに、もともと人の身体を狙ったわけではない有形力の行使についても、判例は暴行罪の成立を認めている。そのような例として、当てるつもりはなく単に脅すつもりで日本刀を振り回したケース(最決昭和39年1月28日刑集18巻1号31頁)や、驚かすために人の数歩手前を狙って石を投げたケース(東京高判昭和25年6月10日高刑3巻2号222頁)がある。

 

暴行罪の「暴行」の概念は前述の通りであるが、これは「狭義の暴行」と言われる。暴行の程度は4段階あり、「最広義の暴行」は騒乱罪などの、人や物に向けられた暴行を、「広義の暴行」は公務執行妨害罪などの、人に向けられた間接的な暴行(人の身体に向けられることを要しない)を、「最狭義の暴行」は強盗罪などの、人の反抗を抑圧するに足りる程度の暴行をそれぞれ意味する。

 

 

暴行の故意で暴行行為を行ったところ、過失によって傷害の結果が発生した場合(暴行致傷)には、「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったとき」という刑法208条の文言には該当しないため、暴行罪としては処罰されない。 するとこのとき、傷害の故意はないので過失傷害罪が成立するにとどまることになる。しかし、過失傷害罪の法定刑は「30万円以下の罰金又は科料」となっており、暴行を加えたが傷害結果が発生しなかった際に適用される暴行罪の「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」にくらべて軽い。 どちらも暴行の故意がある点では同じであるのに、傷害に至った場合には刑が軽く、傷害に至らなかった場合には重いという不均衡が生じることになる。

このような刑の不均衡を解消するために、判例・通説は暴行の故意で傷害の結果が生じた場合には、傷害の故意がなくても、傷害罪を適用できるとしている(最判昭和25年11月9日刑集4巻11号2239頁)。従って暴行致傷は傷害罪で処罰される。

また同様に、暴行の故意で傷害結果を発生させ、さらに人を死亡させた場合(暴行致死)には、傷害致死罪に該当することになる。

 

 

 

 

 

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不動産侵奪罪(ふどうさんしんだつざい)は、刑法に規定された犯罪類型の一つ。第235条の2に規定がある。不動産に対する財産権保護法益個人的法益に対する罪。未遂も処罰される。1960年に新設された規定。

従来、不動産窃盗窃盗罪とならないとされてきたが、戦後不動産の価値が高騰したため、不動産に対する占有奪取行為も犯罪とする必要が生じたため新設された。

刑法235条の2の規定において、他人の不動産を侵奪した者は、十年以下の懲役に処すると定めている。未遂も処罰される(刑法243条)。 また、親族間の特例があり、刑の免除や親告罪などが定められている(刑法244条)。

判例によれば侵奪とは、不動産に対する他人の占有を排除して、自己の事実上の占有を設定する行為である。

  • 無断登記など、占有を法律的に奪取する行為は含まれない。
  • 他人の土地の周囲に、半永久的で容易に除去し得ないコンクリートブロック塀を設置して、資材置場として利用する行為は侵奪に当たる(最決昭和42年11月2日刑集21巻9号1179頁)。
  • 他人の土地に無断で排水口を設置しても、一時利用の目的であって原状回復が容易であり、損害も皆無に等しい場合は侵奪に当たらない(大阪高判昭和40年12月17日高刑18巻7号877頁)。

暴行又は脅迫を用いて相手の意思を抑圧し不動産の占有を奪取したら、強盗罪が成立する。その他、詐欺罪恐喝罪に該当するようなケースにおいても本罪は成立しない。

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 住居侵入罪 (じゅうきょしんにゅうざい) は、刑法130条前段に規定される罪(同条後段には不退去罪が規定されている)。「住居不法侵入」と言われることもあるが、法律実務や講学上で「住居不法侵入罪」という語は用いられない。

住居侵入罪は、正当な理由がないのに、人の住居など(人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船)に侵入した場合に成立する。法定刑は3年以下の懲役または10万円以下の罰金である。未遂も処罰される。

 

保護法益や構成要件の解釈をめぐって争いが多い。構成要件該当性や違法性を認定するにあたっては、住居権者の意思や侵害者(とされる者)の行為態様の考慮、さらに両者の基本的人権の比較考量などをするべきか、するとしてもどのようにすべきかが問題になる。例えば、窃盗目的で開店中のデパートに玄関から入店することが建造物侵入にあたるかといった場面で問題となる。

なお、かつては皇居等侵入罪の規定が刑法131条に存在したが、1947年に削除され、現在は住居侵入罪で処断される。

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